マンションの建て替えに備えて。住民の負担は実際どうなる?

マンションの建て替え

マンションの建て替えがニュースとして取り上げられ、マンションの寿命や住民の負担額についてもさまざまな話が飛び交っています。実際のところ建て替えはできるのか?負担額はいくらなのか?これからマンションの購入をする上で、どういったマンションを選んでいけばいいのかなどについてまとめました。

1.建て替え時、住民の負担額は2000万円!?

マンションが老朽化して建て替えることになったとしたら、住民はどれくらいの費用を負担することになるのでしょうか?

もちろん、さまざまなケースがありますが、建て替えに必要な費用は一戸あたりおよそ2000万円が目安と言われています。

その主な内訳は、古いマンションの解体費用と新しいマンションの建設費用、さらに新マンション建設のための調査・設計・施工計画策定費用の3つです。

RC造の建物の解体費用は60㎡で90~216万円。建設費用は建物のグレードによって異なるものの、60㎡で1,800万円ほどが標準です。

これに事務経費などが加わり、また住民自身が負担するものとして2回分の引越し費用、2年前後の仮住まい費用など合計300~400万円がかかることも考慮に入れる必要があります。

一戸あたり2000万円という建て替え費用はかなり大きな額です。ただ、実際の住民の負担額はこれより少なく抑えられる可能性もあります。2000万円の建て替え費用が、負担額は半額の1000万円程度になることも、場合によっては0円になるケースもあります。

そのカラクリは、マンションを建て替えることで発生する「収益」にあります。マンション建て替えにおける理想的モデルは、建て替え時に総戸数を増やし、増えた住戸を売却して、その利益を建て替え費用に充当するものです。

つまり、新しく増えた住戸を売って得た売却利益を、建て替え費用に活用するわけです。

しかし、このモデルを成立させるには条件があります。それは敷地の容積が余っていて新たに戸数を増やす余地があること。

容積とはその敷地に建てられる建物の最大床面積のことで、その上限は行政が定めています。マンションの場合は容積率が大きいほど高層建築が可能となります。

現実には容積が余っている古いマンションはまれです。逆に、以前より規制が厳しくなったことで、現状「既存不適格」となっているマンションのほうが多いくらいです。

さらに立地も問題になります。新しい入居者がすぐに集まる場所にあるマンションであればいいのですが、そうではなく総戸数を増やしても利益が出ないと見なされれば、建て替え事業を手がけるデベロッパーはGOサインを出しません。

以上により、負担費用が安く抑えられるケースはレアということを、まず知っておいてください。

2.建て替えが起きる可能性はとても低い

実はそもそもマンションの建て替え自体が、過去にさほど多く実現していません。

国土交通省が公開している「マンション建替えの実施状況(平成29年4月1日現在)」によると、建て替えの実施準備中および実施中のマンションは36件、工事完了済のマンションは232件で、合計268件です。

全国のマンションの棟数は約10万棟と言われているので、建て替えが実現したマンションの棟数は全体の0.27%に過ぎません。

2-1.所有者の4/5以上の賛成が必要

建て替えがなかなか実現しない理由の一つは、マンションの建て替え決議が可決されるまでのプロセスが大変な点にあります。

マンション建て替え事業は通常、マンションの管理組合が建て替えについて考えるべきかを審議する「準備段階」、建て替えか修繕かを調査し比較検討する「検討段階」、デベロッパーに依頼して具体的な計画を立てる「計画段階」と進んでいきます。

そして計画が決まったら、そこで区分所有者(住民)による建て替え決議を行います。ここで4/5以上の賛成が得られなければ、次の「実施段階」へは進めません。

2-2.建て替えにかかる負担額が重い

加えて、建て替え負担額が重いことも大きな足かせとなります。負担額0円で建て替えが可能なら賛成者も増えるはずですが、これは非常に幸運なケースです。一般的に、負担額が1000万円を超えると反対数が一気に増えてしまうようです。

特に古いマンションの場合は高齢者が多く暮らしています。多額の負担額を支払い、引っ越しをして仮住まいも借りるよりは、現状のまま静かに暮らしていたいという意見が多くなるのは致し方ない面もあります。

3.マンションの寿命は何年?鉄筋コンクリートは117年

マンション(鉄筋コンクリート造の建物)の法定耐用年数は、47年と定められています。けれどもこれは減価償却の計算のために設定された年数であって、実際の建物の寿命とは別物です。多くのマンションはそれ以降も住むことができます。

例えば日本で最初の分譲マンションと言われる「宮益坂ビルディング」は1953年に建てられ、2012年に建て替え決議が成立、解体工事が始まったのは2016年で、63年間建っていたことになります。この建物はコンクリート造でした。

鉄筋コンクリートを用いた建物の実際の寿命については、国土交通省がまとめた資料「RC造(コンクリート造)の寿命に係る既往の研究例」で触れられています。ここには、100年以上との知見が示されています。

「実際の建物の減耗度調査のうえ、建物の減耗度と実際の使用年数との関係から、鉄筋コンクリ-ト造建物の物理的寿命を117年と推定」、あるいは「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる。)の耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年」というのがそれです。

4.長寿命マンションの探し方

以上のように、マンションの建て替えが実現に至るにはかなりの困難が伴います。となれば、マンションを選ぶときには長寿命の物件かどうかを選択のポイントに加えるべきです。

現在では大規模修繕工事にプラスして、リファイニング工事などと呼ばれる延命技術、再生技術も進歩しています。長寿命のマンションを購入し、こうした技術を駆使して延命を図っていけば、建て替えずとも同じマンションに住み続けることも不可能ではありません。

では長寿命マンションはどのようにして見極めればいいのでしょうか。ポイントは次の2つです。

4-1.マンションの管理状態をチェック

もともとの設計と施工がしっかり行われていることも重要ですが、マンションの状態を保つために最も大きな要素となるのは管理状態です。

管理状態は、10年~15年に一度の大規模修繕が確実に行われてきたかどうかで端的に判断できます。

大規模修繕工事はマンションの経年劣化などに合わせて実施する計画的でまとまった修繕工事であり、外壁の塗装や防水工事などを行うものです。耐震改修がなされているかどうかも寿命に関係します。

4-2.マンションの築年数をチェック

新築や築浅マンションの場合は、大規模修繕工事のための修繕積立金が適正に設定されていることが管理状態を知るための目安になります。

古い中古マンションの場合は、大規模修繕工事に関する修繕履歴を確認できます。

築15年を経過したマンションであれば、一度は大規模修繕工事を行っているはずです。管理会社が作成する「重要事項に係る調査報告書」という書類に履歴が記載されているので、購入時に不動産会社に問い合わせてみましょう。

5.これから住むマンションが建て替えになったら

最後に、実際にこれから住むマンションが建て替えになりそうなときにはどうするべきなのかを考えてみます。以下の項目を確認し、適切な判断をしてください。

・建て替えが本当に必要なのか、修繕の可能性は?
建て替えに代わる案として有力なのは修繕です。修繕で劣化や老朽化に対応できないのか、十分な話し合いと検討をしてください。

・住民負担費用をチェック
住民負担費用がいくらになるかは最重要ポイントです。高すぎると思った場合は国や自治体などの補助制度を利用して負担を減らすことができないか確認しましょう。
建て替えに反対する(または参加しない)区分所有者は、建て替え組合との間の「買取請求」または「受渡請求」によって、時価による持ち分を受け取り、これまでに支払った修繕積立金を精算してもらえます。

・期間と計画をチェック
建て替えについての話し合いが始まって新マンションが建設されるまでの期間は5年程度です。もっとも、これはスムーズに進んだ場合で、中には10年、20年かかるケースもあります。その期間を正確に知るとともに、計画の内容と流れも確認してください。住宅ローンの登記変更など、どんな手続きが必要なのかも要チェックです。

・仮住まいの確保
仮住まいは自分で手配する他、デベロッパーが紹介してくれることもあります。住宅ローンが残っている場合、2年前後住むことになる仮住まい用の家賃を捻出するのは負担が大きいかもしれません。

まとめ

マンションの建て替えが現実問題となれば、住民の負担は大きなものとなります。これを回避するには管理のしっかりとした長寿命のマンションを選ぶことが最も重要です。

そうでなければ、分譲はあきらめて賃貸に住むか、最初からある程度の期間住んだら引っ越すと決めてマンションを買う、といった割り切った選択をすることになるでしょう。

自分の住んでいるマンションの寿命が来ることはあまり考えたくないかもしれませんが、建て替えは自身のライフプランとも大いに関わってくる問題です。なるべく早いうちから想定し、どのような選択をすればいいかを考えておきましょう。

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