住宅ローンの金利は年々変わります。現在は、過去から見ても低金利時代と言えるでしょう。たった0.数パーセントでも、総返済額で見るとかなり額が違ってきます。
過去に金利が高い時代に借りたとしたら、今の底値とも言える低金利を利用して借り換えをした方が、メリットが見込めそうだと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、借り換えをした場合に得をする人の条件や、住宅ローン控除はどうなるのかなど、気になるポイントをお伝えしていきます。
目次
1.住宅ローンの借り換えで得する人の条件
ここではまず、どういった条件の人が借り換えを行なったほうが得できるのかを解説していきます。
1-1.一般的な3つの条件
ローンの借り換えには、初めの借入時と同じように銀行の事務手数料・保証料・抵当権の登記費用といった諸費用がかかります。また、条件によっては繰り上げ返済の手数料も必要です。
こうした諸費用を含めてもお得に借り換えができる条件の目安は、一般的に、「ローンの残債が1000万円以上あること」「10年以上の返済期間が残っていること」「現在借りているローンの金利差が1%以上あること」と言われています。
この目安は、借り換え時の手数料や諸々の経費等も含めた場合に、十分に恩恵を受けるための条件とされてきました。
ですが実際は、住宅ローンを取り扱うアルヒ株式会社が「フラット35」の借り換え経験者に対し、借り換え前後の金利差を調査したところ、全体の8割以上の人が「金利差1.0%未満」で借り入れをしたという結果も出ています。
低金利が続いている現在においては、「金利差があまり無いから得をしない」とは限らず、個々人の適用金利やローン残高など、様々な条件を鑑みると得になる可能性も高いため、まずは借り換えた際のシミュレーションをしてみることが必須と言えるでしょう。
1-2.短期固定金利を選んでいる場合は得する可能性が高い
3年や10年などの短期固定金利でローンを組んでいる場合、選択した期間中は低金利で固定される代わり、期間終了と同時にぐっと金利が上がってしまうことがあります。
月々の返済額に大きく跳ね返るため、借り換えを期に長期固定金利商品を選ぶ方も大変多くなってきています。
-
2.繰り上げ返済と借り換えならどちらがお得?
返済総額を減らすなら、繰り上げ返済という方法もあります。
短期間でローン返済することになるので、当然支払う利息も減ることになるのです。そのため、借り換えを検討する際、比較対象となるのが「繰り上げ返済とどちらがお得なのか」ということです。
繰り上げ返済でネックになるのは、まとまった金額が手元からなくなってしまうこと。ある程度貯蓄にゆとりがある場合は繰り上げ返済をしながら早めに返済を終わらせるのも手段ではありますが、返済額や期間が長ければ長いほど、早めに借り換えをする方がお得になるケースが多くなります。
給与の上昇や確実なボーナスが見込めないかもしれない現代では、今後何が起こるかわかりません。手元の資金が減ってしまうのは将来的な不安も大きくなります。金利が低い今だからこそ、まずは借り換えを検討してみるのが良いでしょう。
具体的に、繰り上げ返済と借り換えのどちらがメリットが大きいかを調べるにはこちらのシミュレーターが便利です。
また、意外と知られていないのは、銀行に金利の引き下げ申し入れを交渉するという手があることです。
住宅着工件数が下がっている今、住宅ローンを借りる件数も減少しており、銀行としても顧客は逃したくないのが現実です。
そこで、借り換えのシミュレーションをしてみたら、まずは現在借り入れをしている銀行へ相談をしてみてください。借り換え手数料よりもお得な手数料で金利を引き下げてもらえる可能性も0ではないでしょう。
しかしその場合は過去に滞納がないこと、他の車や教育ローンなどの借り入れや返済比率に問題がないことなどの信用があることが大前提です。
3.借り換え先は目的に合わせて検討する
住宅ローンには実に多様な商品があり、銀行によってバリエーションも豊富です。金利だけではなく、どんなメリットが期待できるかで借り換えの目的を定め、商品を検討しましょう。
例えば…
「返済総額を安くしたい」
→適用金利が低いローンや、長期金利固定のローン
「団信の保障を見直したい」
→死亡時だけでなく、三大疾病や手術時の保障が充実した保険など
「そろそろリフォームも考えたい」
→借り換えとリフォームが一体型のローン
このように、単に借り換えだけでなく、目的に合った商品を選ぶことで将来的な安心やお得な借り換えへと繋がる場合もあります。
4.借り換えの審査基準やポイント
借り換えをするには、新規の借り入れをするよりも審査基準が厳しくなる傾向にあります。実際にどのような基準となるかをみてみましょう。
4-1.物件の担保評価
不動産は年々価値が下がるものです。購入時の担保評価よりも、現在の担保評価は低くなるのが当たり前の傾向にあります。借り入れをしたい額に見合った価値が無いと見なされると、希望額の借り入れができない場合もあります。
とはいえ、物件価値の下落のスピードとローンの残債が減るスピードはどうがんばっても比例しません。銀行としても借り換えの顧客は獲得したいため、借り換え時は物件担保評価について大目に見てもらえることが多い傾向にあります。
4-2.個人の信用
物件価値の評価に猶予がある分、個人の信用においては厳しく審査される傾向にあります。ひとつひとつ確認していきましょう。
4-2-1.返済負担率
新規の借入時は、年収に対する返済負担額は35%程度が審査の基準値です。しかし借り換え時は25~30%程度になります。
4-2-2.年収
借入時よりも年収が下がっていないことはもちろん、返済負担率の許容範囲が下がることから、求められる年収額の基準も引き上がります。
4-2-3.勤続年数
新規借入時よりも勤続年数が長いかどうかがポイントです。転職や退職をしていると、返済が滞るのではないかという不安を銀行側に与えるため、勤続年数は長いほど審査には有利になります。最低でも3~5年の勤続年数は必要でしょう。
4-2-4.返済遅延
新規の借入時には、住宅ローンの返済履歴が無い方がほとんどです。しかし、返済履歴がある借り換えの場合は、過去の返済に遅延がないかどうかは必ずチェックされる項目です。一般的には信用調査を通し、過去24ヶ月遅延や滞納がないかどうかが審査項目になります。
4-2-5.団体信用保険
健康でないと加入ができない団信は、借り換え時にも加入は絶対条件です。年齢が上がるにつれ、健康リスクも増えることから保険に加入できないために借り換えができないことも考えられるかもしれません。借り換えをするなら、健康なうちにということも視野にいれておきましょう。
4-2-6.完済年齢
ローンの完済時は80歳を超えないことが多くの銀行での条件ですが、借り換え後の返済年齢が借り換え前の完済時年齢を超えてしまうと、審査に通らない場合があります。借り換え時は返済期間を長くすることで月々の負担を減らすことも可能ですが、年齢によりそれが叶わない場合もあるので、なるべく現在と近い条件で借りるようにしましょう。
4-2-7借り入れの増加
新規借入時には無かった、車や教育ローン、カードローンなど住宅ローン以外の借り入れが増えている場合、返済負担率の計算に含まれるため、審査基準がより厳しいものになります。
5.借り換え後も住宅ローン控除は受けられるのか
原則として、借り換えのためのローンは住宅ローン控除の対象になりません。
しかし、条件に当てはまれば引き続き控除を受けられます。
1.借り換え目的が、当初の住宅ローンの返済に当てることがはっきりしている場合
2.借り換え後のローンが「住宅ローン控除の要件」に当てはまること
2に関しては、特に「借り入れ期間が10年以上であること」「年間所得が3000万以下であること」を満たしているか注意しましょう。
しかし10年未満の返済で総返済額がお得になる場合も考えられます。住宅ローン控除は残債や所得に応じての計算となりますから、住宅ローン控除ありきで返済期間を組むのではなく、どちらが自分にとってメリットがあるかどうかをよく吟味して決定しましょう。
まとめ
低金利の今だからこそ、ローンの借り換えで少しでも総返済額をお得にしたいものです。手続きや諸費用の煩雑さから、いまのままでいいかと考えられる方もいるかとは思いますが、大きな買い物の住宅だからこそ、たった少しの金利の違いが長い目で見ると大きな返済額の違いになることを覚えておきましょう。
コメント