マンションを購入するとき、最初にどれくらい費用がかかるものなのでしょうか。特に頭金がいくら必要なのかは気になる点です。
また最近の住宅ローン事情に詳しい人なら、今の時代は「頭金は少なく、繰り上げ返済を多くする」というやりかたの方がお得という話を聞いたことがあるかもしれません。
この繰り上げ返済のことも含め、マンションの頭金について、知っておくべきことを解説します。
目次
1.頭金・手付金・諸費用の違い
マンションなどマイホームを買うとき、最初にかかるお金としてよく聞くのが「頭金」という言葉。でも他に「手付金」や「諸費用」という用語もあります。まずはそれぞれの違いを整理しておきましょう。
1-1 頭金って何?
「頭金」とは住宅ローンを組んでマンションを購入する際、「前もって物件価格の一部として支払うお金」のことです。言い換えれば、「住宅ローンを利用せず自己資金で支払うお金」のことでもあります。式で書くと「頭金=物件価格-住宅ローンによる借入金」ということになります。
年収などの条件によって銀行から「頭金を○円以上用意できれば融資可能です」と言われることはありますが、原則として頭金の額は自由です。最近は頭金ゼロでローンを組む人も増えています。
1-2 手付金はいくら?
頭金とは別に、マンション購入時には「手付金」も必要になります。手付金とは住宅購入の売買契約を結んだとき、買主が売主に対して物件価格の一部を先払いするものです。
頭金との違いは、頭金は住宅ローンを組むとき求められるお金、手付金は住宅の売買契約を結ぶときに必要になるお金という点です。
手付金は売買契約が成立したことを示す、いわば証拠金です。もしも買主の都合で契約を解除すると、手付金は全額没収され、売主の手に渡ります。逆に売主の都合によって契約を破棄する場合には、売主が手付金の倍額を買主に支払うのが一般的です。
手付金を支払い後、何事もなく契約が遂行された場合は、手付金はそのままマンションの購入費用に充当されます。つまり通常は、最終的に頭金の一部となるものです。この手付金の相場は、一般的に物件価格の5~10%といわれています。
1-3 諸費用はいくら?
さらに、マンション購入に関連してかかる税金など諸々の費用のことを「諸費用」と呼びます。
例えば、売買契約時・住宅ローン申し込み時には、契約書に貼付する印紙代(印紙税)がかかります。
他に、登記のための登録免許税、固定資産税、不動産取得税、登記手続きを依頼した司法書士への報酬、ローンの融資手数料や保証料、火災保険料、地震保険料、団体信用生命保険料なども必要です。
これらに加えて、引っ越し代、インテリア・家具・家電などの購入費も用意しておかなければなりません。
この諸費用の相場は、新築マンション購入の場合は物件価格の約5%、中古マンション購入の場合は物件価格の約10%程度です。中古マンションの方が高いのは、仲介手数料が加わるためです。新築でも、媒介業者がいれば仲介手数料がかかります。
最近はこうした諸費用も融資可能な住宅ローンも増えています。ただ、できれば諸費用はローンに頼らず、自己資金から出したいところです。
*おすすめ記事:【保存版】中古マンション購入の諸費用を具体例で全て解説!
2.頭金、みんな実際にどれくらい支払ってるの?
さて、では頭金について、実際にどれくらいの額を支払う人が多いのかを見てみましょう。
参考になるのは住宅金融支援機構が公表している「フラット35利用者調査(2015年度)」というデータです。これによれば、物件価格を示す所要資金の平均値は3,462.1万円、頭金として支払った額を示す手持金の平均値は534.2万円となっています。
ただし、このデータにはタワーマンションなどの高額物件も含まれています。そこで平均値ではなく、より実態に近いとされる中央値をみてみます。中央値では、所要資金は3,296.0万円、手持ち金は312.0万円となっています。
つまり、頭金は310万円程度を用意している人が多いということです。さらに、購入価格に対する頭金の割合は、中央値で9.46%となっています。
昔からマイホーム購入の際の頭金は、物件価格の2割(20%)を目安に用意すべきだといわれます。ところが実際には、1割弱を頭金としている人が多いのです。また前出のデータをみると、頭金ゼロで購入している人も全体の23%程度います。
過去のデータも参照すると、実は頭金の額は近年になるほど低下しています。すなわち、最近は少ない自己資金でマイホームを購入する人が増えているわけです。これは少額の頭金でも借り入れ可能な住宅ローン商品が増えたことや、昨今の経済状況とも関係していると考えられます。
3.頭金を少なく、繰り上げ返済を多く
少ない頭金でローンを組むスタイルは現在のトレンドとなっています。そしてファイナンシャルプランナーなどの専門家からは、現在は「頭金は少なく、代わりに繰り上げ返済額を多く」する方法が有利とする意見がよく見られます。これはどういうことなのでしょうか?
繰り上げ返済は、毎月の返済額が減少する「返済額軽減型」と、返済期間を短縮する「期間短縮型」の2種類から選ぶことができます。仮に、35年ローンで3000万円の物件を購入するとして、頭金の支払いパターンを600万(物件価格の2割)と300万(物件価格の1割)の場合で考えてみましょう。
3-1返済額軽減型の場合
頭金を1割にして、「返済額軽減型」で後からさらに1割(300万円)を繰り上げ返済しても、返済総額は頭金2割の場合とさほど変わりません。つまり、いざというときのために手元に現金は残しておいて、ライフスタイルが落ち着いたら返済する、という安全策を取ることができます。
3-2期間短縮型の場合
一方、「期間短縮型」で同じように後から1割(300万円を)繰り上げ返済した場合は「返済額軽減型」よりも利息軽減の効果が大きく、なんと頭金2割の時よりも返済総額が少なくなります。これは、繰り上げ返済によって返済期間が短縮され、実質的には頭金2割で30年ローンを組んだときの返済状況になるというわけです。
もちろん、この場合毎月の返済額は変わらず、貯蓄も減ることになるので、資金繰りには十分注意が必要です。
3-3 手元に貯金が残るメリットを考えてみよう
しかし、繰り上げ返済を利用したほうが返済総額が安くなるケースがあることは覚えておいて損はありません。
もしも最初から頭金を多く支払って手元の貯金が極端に減ってしまうと、自己資金が回らなくなり、万一のときに困ってしまうかもしれません。
住宅を購入するタイミングというのは、結婚・妊娠・出産・育児休業・時短勤務・初めての子育てなど、生活の変化が続く時期でもあります。
ポイントは、将来のために収入と支出が不安定になる可能性を想定すべきだということです。頭金ではなく、数年後の繰り上げ返済を利用するのは、そのためにも理にかなった方法です。
貯金に余裕があれば繰り上げ返済をして返済総額を減らし、もしも余裕がなくなっていれば予定を変更して、そのままローン返済を続けていけばいいからです。
4.親や妻から援助してもらったら税金はかかるの?
中には、頭金は親などが出してくれるという人もいるかもしれません。頭金を親や妻から援助してもらう場合にかかる税金についても説明しておきます。
4-1 親からの援助を受けた場合
マイホーム購入に際して親から援助を受ける人は少なくありません。ある調査によれば、親から頭金の援助(借入または贈与)を受けた人は全体の4割に及んでいます。
親や祖父母など直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合、「住宅取得等資金贈与の非課税」制度が適用され、消費税が8%の物件であれば最大1,200万円まで非課税となります。また、親兄弟を含めて人から財産をもらった場合、1年間にもらった財産の合計額が110万円以内であれば贈与税はかかりません。
つまり、消費税8%である2018年7月現在、マンションを購入するときには、最大1,200万円に110万円の基礎控除額をプラスした1,310万円までは、親から援助を受けても贈与税は発生しないということです。
*おすすめ記事:「住宅の贈与税」親族から資金援助で家を買う場合を簡単に解説!
4-2 妻の貯金から頭金を出した場合
では、頭金の全額または一部を妻が出した場合はどうでしょうか?登記割合を決めるときに物件を夫の単独所有としてしまうと、妻から夫へ贈与があったとみなされて贈与税がかかる可能性があります。
贈与税がかからないようにするには、資金の負担割合と持分登記割合を同じにして、購入したマンションを共有名義にするのが最も簡単な方法です。夫婦共有名義には住宅ローン控除が夫婦それぞれで受けられたり、将来の相続税が節税されたりといったメリットもあります。
この記事のまとめ
ここまでマンション購入における頭金について説明してきましたが、忘れてはならないのはマイホーム購入は目的ではなく手段だということです。
住宅ローンで借りる額は年収の約5倍が適正といわれます。あくまでこの範囲内でローンを組むことを考え、頭金をいくらにするかを決めるようにしてください。
コメント