築年数を重ねたマンションは購入しても大丈夫?耐震性の見極め方

中古マンション購入で築年数の耐震はどう判断するか

築30年、40年といった中古マンションを購入対象として検討するとき、多くの人が不安に感じるのがマンションの耐震性ではないでしょうか。

しかし、築年数だけでは耐震性の判断はできません。もちろん築年数も大切ですが、実は、築年数よりもそのマンションが今までどのように管理されてきたかが耐震性能を左右します。

この記事では、築年数も含めた耐震についての見るべきポイントと、ハザードマップなどの周辺環境についてもお伝えしていきます。

中古マンション購入の全対像については【重要度順】プロがまとめた中古マンション購入の注意点5つをご確認ください。


1.ひとつの目安は「旧耐震基準か新耐震基準か」

築年数を重ねたマンションについて考えるとき、必ず問題となるのがマンション建築時の「耐震基準」です。

耐震基準とは建築基準法によって定められた、建築物が最低限度の耐震能力を有していることを保証する基準のことです。その内容は1950年に建築基準法が制定されて以来、大地震が起きるたびに見直されてきました。

中でも大幅な改正が行われたのは1981年6月のことです。そのため建築業界などではこの改正以前の基準を「旧耐震基準」、以降の基準を「新耐震基準」と呼んで区別しています。

ただし、1982年~1985年に完成した物件も要注意です。それは、「竣工日(工事完了日)」が1981年以降でも、「着工日」が新耐震基準が施行される以前だった可能性があり、その場合は旧耐震基準に基づいて建築されていることが考えられるからです。耐震基準については仲介会社に問い合わせれば調べてもらえるので、その結果を見て判断しましょう。

また、旧耐震基準のマンションだから危険かというと、それだけでは判断できません。実際にデータを見ていきます。

1-1.大震災のデータで旧耐震と新耐震を比較

旧耐震と新耐震の違いは、簡単に言えば大地震が起きても倒れない建物かどうかです。旧耐震基準では震度5程度の中地震でも建物が倒壊しないことが基準となっていましたが、新耐震基準では中地震では軽微なひび割れにとどまると同時に、震度6強から7に達する大地震が発生しても倒壊・崩壊しないことが基準となっています。

下のグラフは、東京カンテイ「東日本大震災 宮城県マンション被害状況報告」からのデータです。

東日本大震災における宮城県の耐震基準別の建物被害状況

阪神大震災における兵庫県の耐震基準別の建物被害状況

阪神大震災では旧耐震の建物が大破・中破した割合は合わせて6.5%、新耐震の建物が大破・中破した割合は1.6%で、大きな差が見られませんでした。東京カンテイの資料内でも、”新耐震・旧耐震で被災状況に大差なし”とされています。

また、東日本大震災では旧耐震で大破・中破した割合は1.7%、新耐震で大破・中破した割合は1.0%でその差はやはり大きいとは言えませんでした。

1-2.耐震基準適合証明がある場合や取得可能な場合

また、たとえ旧耐震基準で建築されたマンションでも、「耐震基準適合証明」が発行された物件であれば、新耐震基準と同等の耐震性があると判断できます。

この耐震基準適合証明とは、建築士が科学的・客観的に耐震審査を行い、証明書を発行するものです。中古マンションのチラシなどに「耐震基準適合証明が取得可能」と書かれている物件もあり、こちらは耐震基準適合証明の対象となることが期待できる物件を指しています。

なお、中古マンションを購入する際、耐震基準適合証明付きの物件は、住宅ローン控除、登録免許税・不動産取得税の減額などのメリットがあります。中古マンション購入時は、耐震基準適合証明の有無についても必ず確認しておきましょう。

それでもやはり不安だ、という場合はやはり新耐震基準のマンション購入をおすすめします。次に、マンションが建てられた年代ごとのチェックポイントについてお伝えします。

住宅ローン控除についての記事はこちら
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2.バブル崩壊前後のマンションは警戒が必要?

耐震基準とは別に、1989年~1991年頃に建設されたマンションを購入する場合は、警戒すべきかもしれません。80年代末から90年代初期にかけてはいわゆるバブル崩壊前後の時期で、バブル期の勢いを受けたマンションの建築ラッシュがピークに達した頃でもあります。

下のグラフは、国土交通省の分譲マンションストック戸数の資料です。

マンションの供給数グラフ

バブル期物件とも呼ばれるこれらのマンションの特徴は、単に供給量が多かったというだけではありません。当時は転売するために買うというキャピタルゲイン重視の考え方が強く、分譲マンションは投機目的で建設される傾向がありました。

耐震設計をはじめとする性能よりも立地や外観のよさが優先され、建築コストが削られる風潮もあったようです。一方、現場の人手は不足気味で、工期を間に合わせるために手抜きに近い工事が行われていたという指摘も見られます。

もちろん、バブル期物件だから必ず問題があるというわけではありません。管理状態をチェックすることでリスクを抑えることができます。大規模修繕工事が通常通り行われ、メンテナンスが行き届いている物件もあるため、修繕履歴などをしっかりと確認しておきましょう。


3.マンションのカタチは影響する?

マンションの耐震性を確認する際は、マンションの形状にも注目してみましょう。マンションのカタチは素人でも見分けやすいポイントです。

マンションのカタチを見るときは、マンション全体を上から見下ろした「平面形状」で判断するのが簡単です。最も耐震性が高いと言われるのは平面形状が長方形、つまりシンプルな箱型のマンションです。同様に、中央に吹き抜けがあるロの字型のマンションも理想に近いカタチと言えます。

(出典)建築家のための耐震設計教本(日本建築家協会都市災害特別委員会編)

建物の形別の耐震性能

これらに対し、L字型、コの字型、十字型、T字型、住棟を少しずつズラしながらつなげている雁行配置などのマンションは、一般的に耐震性が高いとは言えません。

これらは複数の長方形(直方体)をつなげて建設されており、地震の際は接続部分が弱点となりやすいためです。その弱点をカバーするためにジョイント部分に空間を設け、揺れによるズレを吸収する仕組みのマンションもあります。しかし、そうした工夫のない設計だとどうしても地震によってダメージを受けやすくなってしまいます。

平面形状が長方形やロの字型以外のマンションは、耐震設計がどうなっているのかを確認してみる必要があるでしょう。


4.ハザードマップも見ておこう

ハザードマップとは、自然災害による被害を予想した地図のことです。地震や洪水などの災害対策に使用する目的で、地図には被災想定区域、避難場所、避難経路などが表示されています。マンション自体の耐震性も重要ですが、その地域で起こりうる自然災害についても知っておいて損はありません。

ハザードマップは全国の自治体で作成されており、市役所などで無料配布されている他、国土交通省ハザードマップポータルサイトでも入手できます。

マンションを購入する際は、このハザードマップもチェックしておきましょう。避難場所に行きやすい立地かどうかももちろん大切です。加えて、地盤の強さを推測できる参考資料としても役立つことがあります。

多くの自治体が作成している「揺れやすさマップ」「震度予想図」といった名称のシミュレーション地図を見ると、同じマグニチュードでも地域内の場所によって震度が異なることがわかります。震度の高い場所は、地盤が弱いか、揺れの伝わり方が特殊か、断層が近いなどの理由がある土地です。

また、「揺れやすい地盤 災害大国 迫る危機:朝日新聞デジタル」では、自分の住んでいる地域の住所を入力することで、揺れやすい地盤かどうかをチェックできるようになっています。一度調べてみることをおすすめします。

いくら建物の耐震性が高くても地盤が弱いなどの悪条件があれば安全性は低くなります。こうした地図も入手して、一度目を通してみてください。


5.築年数は大事。しかし管理状態はもっと大事

マンションを購入する際、築年数に対しては多くの人が注意を払います。しかし、中古マンションの耐震性に関して、実はそれ以上に大きな影響力を持つ要素があります。それが建物の維持管理の良し悪しです。

鉄筋コンクリート造の建物は、長年の風雨にさらされるうち徐々に外壁などに小さなひび割れが生じ始めます。このひび割れを放置しているとやがて雨などが染み込んで内部の鉄筋が腐食し、さらに放っておけばついには鉄筋が膨張して周囲のコンクリートを破壊し始めます。

こうなると、いくらもともとの耐震性が高くても、地震に強いマンションであるとは言えなくなってしまいます。しっかりとした管理のもとで定期的に大規模修繕が行われてきたかどうかは、マンションの修繕履歴や長期修繕計画書を参照すればわかります。

有力な購入候補物件があるなら、売主にこれらの書類を見せてもらうよう交渉するのが賢明です。管理の良し悪しは耐震性だけでなく、マンションの寿命をも左右するので、チェックを怠らないようにしましょう。

>>中古マンションは何年住める?「寿命と建て替え」3つのポイント


まとめ

マンションの耐震性は、築年数と連動した耐震基準、バブル期物件かどうか、マンションの平面形状、地盤、そして管理状態などによって決まることがおわかりいただけたでしょうか。築年数を重ねた中古マンションを購入する際はこれらの点について確認し、検討材料としてください。

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