家を購入したなと思い始めた時、必ずぶち当たる「マンションか一戸建てか」の問題。
目の前だけのメリットデメリットではなく、人生通してトータルな視点から考えましょう。
この、記事を読むことによって、「自分の性格・ライフスタイル・経済的視点」からみて、何がベストな方法なのかを選択することができるようになります。
この記事は各種専門機関のデータから作成された「数値・表・グラフ」にて説明しています。
読破に時間がかかりますが、きっとマンションか一戸建てかを決断するためのヒントになると思います。
目次
1マンションと一戸建ての広さの比較をするための前提条件を理解しましょう
下記間取りは実際に販売されていたマンションと一戸建ての図面です。
広告に記載されている広さ(㎡数)は、マンション70㎡、一戸建て100㎡です。
実際に眺めてみてください。
いかがでしょうか?
100㎡の方が、当然70㎡よりは広いに決まっていますよね?
しかしながら、マンションと一戸建ての広告上の広さの記載方法は違うのです。
マンションは、実際に居住出来る面積を記載しておりますが、一戸建ては赤枠で囲った部分も面積として参入しています。
いわゆる、車庫(ビルトインガレージ)、バルコニー、階段を含んだ面積表示になっているのです。
では、一戸建ての実際の居住面積はというと、この場合は約75㎡になります。
数字上では、一戸建ての方が広いですよね。
しかし、部屋内に階段がなく平屋として完結しているマンションと、階段で分かれている一戸建てでは体感として広さの感じ方は違います。
よって、この居住面積の考え方を理解した上で、一度マンションも一戸建ても、両方が同じくらいの居住面積を持つ家に内見に行くことをお勧めします。
2マンションと一戸建ての価格および利便性の比較
これで、広さの比較方法を理解する位ことができました。
今度は、平均的なファミリータイプの居住面積で、マンションと一戸建ての比較をしてみます。
以下の表は、不動産流通推進センターの不動産統計集よりH28年に販売された首都圏の新築マンションと新築建売戸建の居住面積を70㎡換算して、金額比較をしたものです。
同じ居住面積で換算した場合、首都圏の一戸建ての方がマンションより割安な状況です。
しかし、これは駅からの距離(利便性)を考慮していません。
下記グラフは、同年のマンションと戸建てにおける駅からの時間を表しています。
マンションは駅から10分未満が70%の供給に対し、一戸建ては25%と利便性が異なります。
以上からすると、平均価格がマンションの方が高い理由は、利便性の良い立地に位置しているためであると思われます。
その他の価格差の理由としては、木造とRC(鉄筋コンクリート)という耐久性に関わる構造上の違いがあります。
この項目での比較では、駅から同じ距離での価格の比較ができませんでしたので感覚として「駅から遠くてもよければ、一戸建ての方がお得な感じ。」というイメージがつかめました。
3マンションと一戸建ての築年数における資産価値の比較
下記表は、首都圏のマンションと戸建の築年数ごとの価格下落率をグラフにしています。
この比較では一戸建ての方が価格の下落率が低いことがうかがえます。
4マンションと一戸建ての寿命比較
マンションと一戸建ての寿命の比較をしてみます。
下記表は住宅生産団体連合会が行ったアンケート調査です。
新築をする際に、従前に住んでいた一戸建てを取り壊した際の平均築年数の推移です。
各年において多少のばらつきがありますが、平均すると36年前後で建替をしているという状況が読み取れます。
昔の日本家屋は100年持つという事を良く聞きますが、統計データ上では直近の木造住宅は寿命が短いようです。
しかしながら、ちゃんと修繕していれば筆者としては36年以上の耐用年数はあると考えています。
一方、マンションの寿命については、このような明確なデータはありません。
未だ、建て替えを行ったという実績が少ないためです。
よって、構造計算による推論で語られる事が多いようです。
国土交通省がまとめた、「RC造の寿命に係る既住の研究例」によれば、
「鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定」飯塚裕(1979)「建築の維持管理」鹿島出版会)、
「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数としての耐用年数は120年、外装仕上により延命し耐用年数は150年」
であるとされています。
しかし、これは約30年以上も前のデータです。
国の第3セクターであるJS日本総合住生活の技術開発研究所と耐用年数の問題について話をする機会がありました。
最新のメンテナンス技術から考えると「管理さえしっかりしていれば、何年が寿命なんてはっきり言えないくらいもってしまうと思う。」というはっきりとは言い切れない状況です。
こちらの記事「中古マンションは何年住める?「寿命と建て替え」3つのポイント」もご参考にしてください。
以上、寿命の比較という事から考えると、構造の問題が明確に違うので当然の事ながらマンションの寿命の方が長くなります。
データから換算するにマンションの方が戸建より3倍以上長持ちするという結論になります。
5マンションと一戸建てのランニングコスト比較
5-1修繕費・管理費
マンションは「国土交通省が7,220人から回答を得たアンケート結果」、一戸建ては「at homeが495人から回答を得たアンケート結果」を基にして、回答者から得た実際にかかった金額の比較表を作成してみました。
マンションは毎月強制的に自動引き落としされる金額です。
一戸建ては、毎月自動引き落としではありませんので、老朽化が進んで修繕が必要になった時点で、実際に修繕を行った外装部分にかかった費用と、築後何年で行ったかを勘案し、マンションと同様に毎月積み立てた場合の想定金額を算出しました。
※一戸建ての修繕内容は「外壁、屋根、ベランダ、床下、玄関、給水管、シロアリ他」の修繕金額を集計しています。
こちらを見ると、若干マンションの方が月々の費用が高いようです。
ただし、一戸建ての管理費用を0円としていますので、マンションと同じように「植栽の剪定・外灯の交換及び電気代・町内会費等」の費用を加味してません。加味した同じ条件でみた場合のランニングコストはほぼ同じと考えても良いでしょう。
また、マンションは平均の値として修繕費を10,783円としていますが、多くのマンションは新築時の修繕費用を低くし、段階的に増額していくケースが多いので、築年数によってかかる費用が変わってきます。イメージとして新築時に修繕費用が6,000円だったものが、築年数が経つにつれて最終的には1万前後上がってきます。
※マンションの新築と中古でのランニングコスト比較はこちらの「マンションは新築と中古どっち?データで検証し迷いがなくなる!」をご参考にしてください。
一戸建てのアンケートは、老朽化に対応して修繕を実施している人のアンケート結果です。
よって、放置をしてしまっている場合はアンケートに含まれておりません。
おそらくは、そのようなケースが多い為、一戸建てのライフサイクルも短命なのかもしれません。
一戸建ては強制的に修繕費用を徴収されないからと言って、放置だけはいけません。
老朽化が進んできた場合に、自身でそろそろ修繕が必要だと見極められる決断力と適正価格で修繕を行ってくれる業者を探すことが肝心です。
5-2固定資産税
固定資産税は様々な要素が絡んでくるので、非常に単純化します。そして前提条件を統一します。
固定資産税における建物評価額は地域による格差は考えなくても大丈夫です。
違うのは、土地の評価額です。
前提条件
居住面積:70㎡
場所:JR駒込駅 徒歩圏 (弊社がある場所にしてみました。)
土地値:52万@㎡(路線価)
建ぺい率:60%
容積率:300%
※その他の建築基準法の条件、減税制度は加味しません。
※マンンション土地は上記容積率から勘案してます。
※建物部分の固定資産税ではマンション(RC)は60年、一戸建(木造)は25年で評価額が下がっていき、どんなに年数が経っても20%の評価額が残ります。
この前提条件で、マンションの物理的耐用年数が100年以上ありますので、マンションと一戸建ともに100年目までの固定資産税を10年ごとに概算してます。
この表からすると、新築マンションと新築一戸建ての50年間トータル比較では約70万円、年間約1.4万円マンションの方が高いという結果になりました。
ところで、面白いのが50年目以降の両者を比較すると50年間で約130万円、年間約2.6万円もマンションの方が安いという結果です。
一戸建ては土地部分が減額評価される事がないため、建物の価値が下がりきっても相応の固定資産税がかかるという状況です。
ただし、上記「4寿命の比較」より一戸建の平均建て替え年数を考えると、50年目以降の中古戸建は現実的ではないと思われます。
固定資産税の支払いを考えれば、「中古」マンションを購入する事がお得ではあります。
5-3駐車場代
マンションは駐車場代がかかるけど、戸建は駐車場代がかからないと思っていらっしゃる方が多いのですが、戸建も駐車スペースの土地を購入しているという観点から比較する必要があります。
ちなみに、マンションは自身が車を持っていなければ、当然のことながら駐車場代はかかりません。
しかし、戸建は車を持っている時期があろうがなかろうが、例えばローンを35年間組んでいる間は、駐車スペース分の土地のローン支出があります。ちゃんと、ランニングコストとして換算しましょう。
では、どのような比較になるのか?
神奈川県、埼玉県、千葉県の県庁所在地があるJR最寄り駅から徒歩10分で購入出来る最安値の土地相場と駐車場代を比較してみます。
駐車場の必要スペースを中型車が必要な理想の広さ(2.5m x 5.6m=14㎡)の土地代を毎月のローン支出として計算してみました。
※H29年11月のレインズにて登録されていた土地で、駅から徒歩10分圏内で最安値の土地を採用しています。
※駐車場はその土地近隣で最安値である駐車場代を掲載しております。
※ローンは金利1%、35年ローンで計算しております。
以上より、関内駅は土地を買うより、駐車場代を別途支払った方が安上がり。そもそもココで一戸建てを購入するのは現実的ではないでしょう。
本千葉駅は土地を購入した方が、別途駐車場代を払うよりお得感があります。
浦和駅の場合は、どちらも同じくらいでしょうか。
ちなみに、都庁の所在地であるJR新宿駅徒歩10分で一戸建ての家を購入するとういのも、あまり現実的ではないので東京は除外しました。
このような感覚をもって、駐車スペース(約14㎡)を確保するために、その土地分の月々のローン支払いはいくらになるのか?
というコスト意識を持つと良いでしょう。
5-4火災保険・地震保険
マンションと一戸建てでは火災保険と地震保険がどれくらい違うのか?
居住面積が70㎡という条件を揃えて、年間でかかるコストの比較をしてみます。
構造的に火災になりやすか?倒壊しやすいか?の違いにより、かかる保険料のコストが、マンションと一戸建てでは相違することがわかります。
年間価格差は約4万5千円ですが、長期的に見るとだいぶ負担の差が出てきます。
上記表のシミュレーションはコチラを利用させていただきました。
6耐震の比較
マンションと一戸建ては大地震の際に、どれだけの被害の違いがあるのか?
について色々と調査した際に、もっともシンプルにまとめられていたものが「阪神・淡路大震災 芦屋市の記録」でした。
東日本大震災では、マンションvs木造戸建の明確なデータが得られなく、熊本の震災では未だ最新データがまとめられてないと思われます。
こちらのデータからわかることは、一戸建(木造)とマンション(鉄筋コンクリート)では、明らかにマンションの倒壊率は戸建に比べて低いということです。
しかし、一戸建でも木質系プレハブ(ツーバイフォー工法等の壁構造)は耐震性として強い事がうかがえます。
7ライフスタイルからの比較
いろいろなデータをあげましたが、結局は自分のライフスタイルから判断するのが良いのかと思っています。
これから初めて家を買う事を検討している人に対して、会場でよく下記の質問をします。
「新築と中古ではどちらが良いですか?手をあげてください」と聞くと、新築に軍配があがります。
「マンションと一戸建てではどちらが良いですか?手をあげてください」と聞くと、一戸建てに軍配があがります。
大概の人は、新築の一戸建てに憧れがあるようです。
おそらく、TVのCMで新築の一戸建てが流れているからなのではと思っています。中古を買いましょうというCMは見た事がありません。
話が少しそれますが、新築と中古の考えを冷静に捉えるために、こちらの「なぜ、中古マンションを購入してリノベーションが流行しているのか?」の記事もご参考にしてください。
話を戻します。
オススメの考え方としては、仕事が首都圏の電車通勤の場合で、若くして初めて家を購入するのであれば、マンションが良いのかと思います。
若い世代は、どうしても仕事中心の生活になりがちです。
よって、比較的駅に近い立地に位置するマンションを最初に購入するのです。
そして、若くして購入してもマンションは寿命が長いので、自分が生きている間はずっと存在しそうです。
リタイアする際にはマンションの支払いも完了し、今度は自然豊かな郊外の安い土地に、夢の注文住宅を建てる。
最初に購入したマンションは、自分の子供に譲るか貸すか?もしくは、他人に貸せば家賃収入が入り、リタイア時に建てる注文住宅の支払いにあてる事も出来そうです。
一方、仕事場が郊外の工場等の駅から離れた場所にあって、仕事には車を使うという方であれば、戸建が良いのではないでしょうか?
郊外であれば、戸建も割安で購入する事が出来ます。
そして、この場合はちゃんと修繕費用を貯金しておきましょう。
まとめ
・駅から近い必要がない場合は一戸建ての方がお得感があります。
・価格の下落率は一戸建ての方が低いです。
・建物の寿命はマンションの方が3倍程度長持ちします。
・修繕費・管理費費用はマンションも一戸建ても同程度かかります。
・固定資産税は新築なら一戸建て、中古ならマンションの方がお得です。
・地震に対してはマンションの方が安心です。
以上、それぞれにメリットデメリットがありましたね。
やはり、自分の仕事場への通勤方法を念頭に考えるのが良いのかと思います。
近年では、「通勤時間が長いほど幸福度が下がる」というデータが取れてきています。
ご自身のライフスタイルに照らし合わせて、この記事のデータを活用してマンションなのか一戸建てなのかを決断できるお役に立つことができれば幸いです。
また、マンションの耐震や寿命について知りたい方は、中古マンションは何年住める?「寿命と建て替え」3つのポイントをご確認ください。
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