中古マンションリノベーションの教科書〜安心予算で理想の暮らし〜

マンションと言えば新築――そう言われていた時期もありましたが、昨今では実は中古マンションの方が売れるようになっています。

不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017)によると、2016年を境に、新築マンションよりも中古マンションの方が売れている傾向が見て取れます。日本では初めてのことで、このことからも時代は大きく変わっていると言えます。

新築の価格が一般人に届きにくい価格になりつつあることもその一因ですが、それに加えて、中古マンションを購入してリノベーションするという、予算を下げつつ満足度の高い家を手に入れる選択肢が生まれ、世の中に浸透してきたことも理由の一つと考えられます。

この記事では、中古マンションを購入してリノベーションする場合に必要な費用相場、期間、注意点やメリットデメリット、住宅ローンや税金など全体像をお伝えしていきます。


1.どうして安心予算で理想の暮らしが手に入るの?

まずは、中古マンション+リノベーションという選択をすると無理のない予算内で理想の暮らしが手に入るという点の解説です。

1-1.リノベーションをしても新築マンションに比べ予算が大幅に下げられる

首都圏の新築マンションの平均購入価格は5452万円です(「2017年首都圏新築マンション契約者動向調査」/リクルート住まいカンパニー調べ)。これに対し、中古マンションの購入価格は同じエリアの場合、2100万円以上も安くおさまるケースもあります。

新築中古価格差グラフ

この価格差ならば中古マンションを購入し、さらにリノベーションをしても、新築マンションを購入するより大幅に安い価格で新居が手に入ります。より詳しくは、都内に通勤する人が新築より中古マンションのリノベを選ぶ3つの理由もご覧ください。

1-2.中古マンションは流通数が多く立地を自由度高く選べる

新築マンションの供給数は2008年以降減少しています。良い立地条件を加えればなおさら少なくなってしまいます。一方、中古マンションは、人気エリアや交通の便が良い街ほど多く存在し、しかも駅から徒歩数分といった場所に存在します。

これは実は当たり前のこと。マンションを建てる立場で考えれば、ちゃんと完売してほしいため、良い土地(利便性などが良い土地)に建てます。つまり、本当に良い土地と言われる場所は当時の新築マンションたち(中古マンション)が占拠しているのです。

そのおかげで、利便性の良いエリアや自分たちに好都合なエリアから物件を探すことができます。より詳しくは、都内に通勤する人が新築より中古マンションのリノベを選ぶ3つの理由もご覧ください。

1-3.リノベーションの魅力!間取りや設備・雰囲気を自由に設計できる

リノベーションとリフォームの違いは実は業界でしっかり定義されていませんが、いえろはでは、リフォームのことを現状回復させる様々大小の工事。リノベーションのことを、住む人のライフスタイルに合わせ価値を生み出すものとしています。

ビフォア
アフター

>>リノベーションでここまで変わる!ビフォーアフター10選より

リノベーションは、マンションの専有部内をコンクリートの箱の状態に戻しゼロから設計しなおすものなので、間取りも内装も、雰囲気も全てガラリと変えることができます。デザイン的で素敵に暮らせることはもちろんですが、住んできた賃貸の不満であがりやすい、

・導線のムダ、部屋のだぶつき
・キッチンの向き、大きさ
・結露、カビ
・音

などの問題の解消が可能であることは、長く住む上でこれ以上ないメリットだと言えます。もちろん、キッチンやお風呂などの設備も好きなメーカーの好きなブランドの商品を選択できますし、細かく言えば、ドアノブや照明のスイッチ1つ1つも好きなものを選べます。 また、これらを選びながら自分たちも設計に大幅に関わるため、後々まで高い満足度が継続するケースが多いのも特徴です。

関連記事:あなたはどのタイプ?キッチンタイプ別リノベーション事例7選

1-4.実際にリノベーションをした人たちの感想は?

<奥様> リノベーションをした友達の家にいつも遊びに行っていて、リノベーションした直後から何年か住んで経過した様子とかも見たりとか二人の意見も聞いて、あ良いかなと思って。

<ご主人> なんか新しいとこ買うというよりかはリノベーションしようって考えてました。

<奥様> そうですね。なんか新築はやっぱりちょっと合わないので。

<ご主人> 自分の好きなようにできないから。

<奥様> やっぱり床とか壁とかクロスだったり、ビニール、、なんていうかテカテカした。。化学系のものなので、ケミカルなものよりも自然素材のお家で心地よく住みたいなっていうのがあったので。息子も、アレルギーとかは無いですけど、シックハウスとかもすごい気になってたので。やっぱりそういうものが良いなって思ってました。

<奥様> 家はいつか欲しかったし、賃貸が嫌だったんです。毎月毎月、高い家賃を払っても自分の物にならないし。どれも全部一緒で、絶対こんな画一的なところには住みたくないって思っていました。とはいえ、一戸建てなんて夢のまた夢だと思っていたので、どうしようかなぁって、ずっと悩んでいたときに、リノベーションというものを知って。なんかすごい響いちゃいました。


2.中古マンション購入とリノベーションにかかる費用と相場

ここでは、リノベーションと中古マンションでそれぞれかかる費用について解説していきます。【重要度順】プロがまとめた中古マンション購入の注意点5つでも触れていますが、使っていい予算を超えてしまうと簡単に不幸になってしまうのが住宅購入の怖いところです。不動産会社の言いなりになる前に、どの程度の住宅ローンが組めるのかを確認しておきましょう。

>>【年収別】住宅ローン目安表!その予算で住めるエリアは?広さは?

2-1.リノベーション費用や相場

リノベーション費用は、60㎡の場合で約660万円~900万円が相場です。1㎡あたりでは11万円~15万円程度が目安になるでしょう。

>>リノベーション会社を探せるサービスSUVACO

ただし、こだわるほど金額は上がっていくので注意が必要です。また、稀に部分リフォームや表層リフォームなどの工事でも、リノベーションと打ち出している会社もあり、相場より数百万円以上安い金額のケースもあるため、どんな工事をしてくれるのか確認を取りましょう。

関連記事:中古マンションリノベーションの費用相場と安く抑える4ポイント

2-2.中古マンションの購入にかかる費用

中古マンションの購入には、物件自体の費用とは別に諸費用というものが必要です。

諸費用の内容は、仲介手数料、各種保険、税金、引っ越し費用などで、物件価格の8~10%が必要となります。頭金とよく混同しがちですが、頭金はマンションの価格の一部を現金で支払うものです。

>>【保存版】中古マンション購入の諸費用を具体例で全て解説!

また、中古マンションの平均価格は首都圏の場合で3257万円です。

仮に、3300万円の中古マンションを購入して900万円をかけてリノベーションをしたとすれば4200万円。前出の新築マンションの平均購入価格5452万円で新築マンションを購入した場合より、1000万円の差が出ることになります。

⇒詳しくは、中古マンションリノベーションの費用相場と安く抑える4ポイントもご覧ください。


3.中古マンション探しからリノベーションをして引っ越すまでの期間

中古マンションを探してリノベーションを行い、引っ越すまでどれくらいの期間が必要なのかも気になります。

中古マンション探しの期間は人によって異なります。1年探して見つからない人もいれば、2週間で決めてしまう人もいるのです。あくまで参考ですが、ゼロリノベの場合は2~3ヶ月で物件が決まるというケースが平均です。

さて、リノベーションに必要な期間は6~7ヶ月です。通常、設計に3ヶ月、工事に3ヶ月はかかると考えておきましょう。

物件を探すところからトータルすると、スムーズにいって10ヶ月程度で引っ越しにまで到達するというイメージです。場合によっては1年以上かかることもあるので、少し腰を据えて取り組むという心構えが必要です。

関連記事:意外にかかる中古マンションのリノベーション期間の注意点

関連記事:今すぐ確認!後悔しない中古マンションの探し方


4.中古マンションリノベーションの注意点やデメリットは?

中古マンションをリノベーションすることには、注意点やデメリットもあります。中古マンションとリノベーションそれぞれについて説明します。

4-1.中古マンションの注意点とデメリット

中古マンションで多くの人が懸念するのは、建物の耐震性と寿命ではないでしょうか。この2点を左右するのは、マンションがこれまでどのように管理されてきたかです。ここで決まります。そして、中古マンションの管理については、過去の大規模修繕工事の履歴や修繕積立金の状況、今後の修繕計画などでチェックできます。

マンションの寿命を左右する鉄筋コンクリートの寿命は117年以上と言われていますが、この鉄筋コンクリートも放置されては性能を発揮できません。そのため修繕や管理が必要になり、その履歴を確認することで安全性を判断する材料とすることができます。

>>中古マンションは何年住める?「寿命と建て替え」3つのポイント

また、築25年以上のマンションで一度も配管が交換されていない場合は、水漏れリスクも考えられます。こちらも適切な時期に修繕がされているか、配管はいつ交換されたのかを確認しておきましょう。

>>中古マンションの配管寿命は?築38年の物件を買っても大丈夫?

ほかには、実際に暮らす空間はリノベーションすることができても、建物の外観やエントランスは新築マンションに比べて見劣りすると考える人もいます。この点に強いこだわりがある場合は、新築マンションとの価格差とのトレードオフと考えて判断することになるでしょう。

>>マンションは新築と中古どっち?4つのデータ比較で迷いがなくなる!

一方で購入前に建物の外観・エントランス・その他の共用部分、さらに周辺環境や管理状態、住民などを確認できるのは、中古マンションのメリットとも言えます。

その他、見落としがちな中古マンション購入の注意点の全体像については、【重要度順】プロがまとめた中古マンション購入の注意点5つをご確認ください。

4-2.リノベーションの注意点とデメリット

これは中古マンションに関わる部分でもありますが、マンションによっては、水回りの大幅な移動や工事、フローリングの使用ができないマンションもあります。リノベーションができる物件かどうかしっかり確認しましょう。(6.中古マンションリノベーション会社の選び方で詳しく触れます)

マンションのリノベーションでは、サッシ、玄関ドアは勝手に取り替えることができません。多くの場合、これらは共用部分と見なされるためです。

ドアの内側は塗装するなど自分たちの自由にできる場合もありますが、外側は現状のままになります。サッシも交換したい場合は管理組合の決議が必要です。ただし、マンションによっては細則で区分所有者による修理・交換が認められていることもあるので、まず確認することをおすすめします。

他には、リノベーションは実際に完成するまでイメージが湧きにくい点もデメリットと言えます。完成した姿を見るまでは不安が募ることもあるでしょう。これを避けるには、ショールームやオープンハウスに積極的に足を運んでイメージをつかんでおくことです。デザイナーや設計士に写真をたくさん見せ、密にコミュニケーションを取ってイメージの共有を図ることも大切です。

さらに、リノベーションは細部にこだわれば金額もかさみます。キッチンを造作で作る、希少な木材を使った無垢フローリングにするといった要望を重ねるほど、青天井に予算が膨らみます。こだわるポイントを絞って、しっかりと予算内に収めるようにする必要があります。

関連記事:業界人が語る中古マンションリノベーションのメリット・デメリット


5.中古マンションリノベーションの住宅ローン・補助金・消費税

予算絡みでもう少し補足を。中古マンションの購入とリノベーションの費用は、別々に支払わなくても、一緒にローンが組める銀行が存在します。中古マンション購入のために住宅ローンを組み、さらにリフォームローンを利用する場合よりも、金利が低くなります。

>>リノベーションのローンを迷わず選ぶ方法とオススメ銀行5選

また、人によって考え方は違いますが、住宅ローンの金利タイプは金利変動型よりも固定金利型がおすすめです。理由は、長期的プランニングをしやすい、繰り上げ返済などの計画が立てやすい、金利の上下や世間の動きを気にせずに済むなど、固定金利の方が何かと安心できるからです。

>>【固定・変動】住宅ローンの金利の種類と賢い選び方

さらに、中古マンションを購入すると住宅ローン控除(減税)の対象になり、加えてリノベーションをした場合も減税の対象となるケースがあります。リノベーションには補助金制度も用意されています。政府が行っている「住宅ストック循環支援事業」や、各地方自治体の補助金が利用できます。

>>【2019年】あなたに最適なリフォーム減税はどれ?6つのケースから選ぼう!

住宅ローン控除を受けると、ローン残高の1%が10年間、所得税から控除されます。上限は40万円で、消費税がかからない個人間売買の物件は上限20万円です。つまり、10年間の控除額は、消費税がかかる中古マンションを買った場合は最大400万円、消費税がかからない中古マンションを買った場合は最大200万円です。

>>【2019】住宅ローン減税の全体像を解説!年収・借入額別の控除額まとめ

もっとも、所得税などの控除なので、最大額を得るということはそれなりの年収と収めている税金、それに加え物件側にも控除されるための諸条件があります。条件に縛られると物件が探せなくなってしまうので、対象だったらラッキーという程度の優先順位にしておくことをおすすめします。

>>【買う前必読】中古マンションの住宅ローン控除に縛られない買い方


6.中古マンションリノベーション会社の選び方

最後に、リノベーション会社をどのように選んだらいいのかをご紹介します。本記事でおすすめしたいのは、中古マンションをリノベーションする場合、「ワンストップリノベーション」の会社を選ぶことです。

マンションは、当然リノベーションをすることを前提とした物件探しをしなければなりません。しかし、一般的な不動産会社はリノベーションに向いている物件かどうか判断するノウハウを持っているケースは稀と言えます。ワンストップの会社の場合、社内にノウハウがあるため安心できます。

また、住宅ローンをリノベーション費用まで入れて組む場合、リノベーションの見積もりが必要になります。(細かな打ち合わせをするより前に概算費用が必要になります)つまり、不動産会社とリノベーション会社、そして住宅ローンを申請する銀行の3つの窓口とやり取りを繰り返さなければならないのです。

これは非常に大変です。そこをワンストップリノベーションの会社なら、物件仲介契約、設計契約、施工契約すべてを1つの会社が担ってくれます。住宅ローン関係の書類や手続きのフォローも行ってくれます。

また、住まいのことはすべてその会社の担当者に相談すればいいので責任の所在も明確です。「ワンストップの会社は結局外注費が高くつくので割高」という意見もあり、もっともな話です。そのため、会社内部に全ての部門があるところを選べば解決します。

>>自分にピッタリのリノベーション会社の選び方がわかる6つの手順

リノベーション会社が自分に合っているかを判断するポイントは、各社のサイトでコンセプト、サービス、事例を確認することです。たとえどんなに好みの事例でも、コンセプトやサービスが噛み合っていないと思ったリノベーションができないことがあります。

会社や担当者との相性は非常に大切ですから、セミナーに足を運ぶのもおすすめです。


まとめ

いかがでしょう、中古マンションを購入しリノベーションして暮らす、という方法の魅力がおわかりいただけたでしょうか。

記事中では各所で新築マンションとの比較をしましたが、もちろん、新築マンションが悪いというわけではなく、それぞれ良いところがあります。ただ、中古マンション+リノベーションの場合は価格が安く、自分のライフスタイルに合致した居住空間が手に入りやすいということです。注意点やデメリットも含めて、検討材料にしてみてください。

リノベ体験記:間取り成功のお手本!デンマーク風の作りこみ過ぎないリノベ事例。

リノベーションしたリビング

実際にリノベーションした家族がどんなところに工夫をし、こだわったのか見てみませんか?今回のリノベーションは、ドアを極力作らない、間仕切りの壁も必要なぶんだけ。実はドアがあるのはお風呂やトイレに向かうサニタリールームの1枚のみ。そんな作り込み過ぎない間取りによって、広さ、眺め、ひかり、子供の様子や気配を感じるゆったりした生活を得られるようになりました。